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2010.12.23 (Thu)

【その他】 災い転じて福となす?

          
          
災い転じて福となす?


       
「すごいね、母さん、こんなふうに海の向こうに富士山が見える所は少ないのよ」

「私もこんな富士山始めてよ!しかも晴れていて最高ね」


災い転じて福となす1   災い転じて福となす2



義母と嫁さんの声が弾んでいる。

この会話は、つくねも含め先日みんなで西伊豆の戸田温泉に出かけ、
その帰りに海岸線を走っていた時の会話である。
 
しかしその前の日は言葉にこそ出さなかったが、
かなり問題をはらんだ状況だったのである。


今年の猛暑が相当堪えていた義母が、
最近ようやく体調も良くなり箱根や鎌倉など外出が出来るようになった。

それでも以前のように泊まりがけで何処かに行こう誘っても、
まだ体力に自信がないと言って、頑として首を縦に振らないでいる。

元気の元は食べることと身体を動かすことと思っている私であるが、
なんとか義母を外出させるところまでこぎつけたのであともう少しなのである。

今回の西伊豆の戸田温泉は、ペットが泊まれて家から近い温泉宿の候補の一つで、
以前から義母を誘っていた温泉の中の一つであったが、
義母は泊まりがけはどうしても嫌だと言って関心を示さないでいた。



「貴方の誕生日には、どこか美味しいもの食べに行きましょうね」

義母は、私の誕生日を祝ってくれようとしている。

「美味しいものもいいけど、どこか泊まりがけで温泉にでも行こうよ」

と、せっかくの義母の申し出を何とか一泊の温泉旅行に変えようとする私である。

「私はつくねと家にいるから、貴方がた二人で行ってきたら」

と、つれない返事である。

去年までは横浜に来るたびに1週間ほど馴染みの温泉宿で泊まることを常としていた義母なのに、
余程体力に自信がなくなったのであろう。


誕生日の前日にも、駄目もとで話をしてみるが、
義母の意思は固く良い返事は返ってこなかった。


「誕生日おめでとう!」

誕生日の朝、義母や嫁さんからお祝いの言葉をかけられる。

朝食も終わり、部屋に戻ってパソコンを触っていると、
嫁さんが来て、夜会食するお店に予約の電話を入れておいて欲しいという。


「うん、良いよ、でもその前にもう一度おばあちゃんに西伊豆に行こうと声をかけてみて」

私の誕生日の祝いというせっかくのチャンスを逃すと、
本当に義母は泊まりがけの旅行はもう行かなくなってしまうかもしれない。

”病は気から”ではないが、もう歳だからと自分で思い込んでしまってはまずいのである。


しばらくして下に降りて行った嫁さんが戻ってきた。

「母さんが伊豆に行くって!もう準備を始めているよ」

てっきり無理と思っていた泊まりがけの旅行である、
やはり、私の誕生日祝い、ということが効いたのであろうか。

私も急いで下に降りて行き義母と顔を合わせる。

「ヤッター!」

子供のように義母に声をかけると、義母が苦笑いを返した。

さー大慌てである。
つくねは、もう既に尻尾振り振りで部屋の中を走り回っている。

宿に電話をする。
平日だったので幸い部屋が空いていた。
良かった!

バタバタと用意をして11時過ぎに車で家をでる。
つくねも泊まりがけの旅行は久しぶりである。


こうして急に決まった西伊豆の戸田温泉行き、
朝食を終えても泊まりがけの旅行には全く関心のなかった義母、
戸田温泉がどの辺りにあるのかまるで分かっていない。

「ここから何時間くらいかかるの」

体力に自信がないと思い込んでいるので、
とにかくどれだけ時間かかるかが気になるのである。
2時間半ほどと答えるが、とにかく出てしまえばもうこちらのものだ。


途中、新しく改装オープンした東名足柄SAで休憩を兼ねて昼食を取る。
従来のSAから大きく変質した”EXPASA足柄”、まるで一つのテーマパークである。


災い転じて福となす3   災い転じて福となす4



ここまでは、何にも問題はなかった。
なんだかんだと泊まる旅行を拒み続けていた義母も快晴の中、
大好きなつくねに声をかけながらドライブを楽しんでいた。

沼津ICで東名を降り、宿のHPで指定されたルートに従い、
伊豆中央道経由県道18号の山道に入る。

足柄SAで1時間ほど休憩を取ったといえ
車に乗っている時間は既に予定の2時間半は超えているが、
道はくねくねしたつづら折りの山道が続いている。


「82歳の年寄りがこんなところまで来るなんて」

突如後部座席から義母の声が聞こえた。

「おばあちゃん、本当は、”こんなとこまで連れてこられるなんて”、と言いたいんだろう」

この時の私には、まだ義母に冗談を言い返すだけの余裕があった。


なんとか山道を下り、目指す戸田温泉の宿についた。

”エッ、ここなの?!”

まずい、これは失敗したかなと
最初の“やばい”が私の頭の中を駆け巡った。

西伊豆の戸田温泉の今回の宿、
当然宿は海の見える所だという先入観があったので宿のHPで確かめることもなく
ペットと泊まれ部屋食で魚料理が自慢の宿ということで選んだのである。

ところがである、なんと着いた宿は、
海なんか何処にも見えないミカン畑の中にポツンと立っているではないか。
宿のHPには”和風モダンな宿”とあったがどうみてもただのホテルである。

あれだけ嫌がっていた義母を無理して連れ出してやってきたのに
これでは女性達の顔をまともに見れるわけがない。


仲居さんに案内されている間もみんなには会話がない。
まずい!

3階の角部屋に通され荷物を窓際に置き、
なぜか降ろされている窓のブラインドを上げようとした。

”なんだあれは!!”

私の落ち込んだ気持ちに更に追い打ちがかかる。

窓の外から見えたのは西伊豆の紺碧の海ではなく、
なんとお寺のお墓だったのである。

二番目の”やばい”である。
ブラインドを上げることを止めて逆に完全に下まで降ろすことにする。


私の趣味は温泉巡り。
ほとんどは身勝手な一人旅であるが、唯一家族に感謝されているのは、
そんな温泉巡りの中で特に気に入った温泉に後日家族を連れていくことである。

そんな自称“温泉通”の私が選んだ宿がこれでは”温泉通”の看板返上である。


私自身、趣味の温泉巡りで戸田温泉には一度だけきているが
なにせ20年前のことである。
しかも入湯したのは共同浴場で宿には泊まっていない。

その上、今回はつくねが泊まれる宿という制約があり、
これまで入湯した中の評価の高い温泉宿を選んだわけではなかった。
しかし、これは言訳にすぎない。

ブラインドで窓の外の景色を隠し、
一服する間もなく嫁さんが担当の仲居さんに声をかける。


「ここから沼津までフェリーで行けますか」

実は、ここまで来る間の山道で義母が声をかけたあの時既に
義母の腰が痛くなっていたらしいのである。

嫁さんが、同じルートで帰るのは無理と考え、
フェリーで沼津まで帰る方法を考えているのである。

仲居さんの返事は、人だけが乗れる高速船が沼津まで就航しているが
フェリーは沼津には行っていないという。

仲居さんが部屋から出ていくなり、嫁さんから最後通告である。

「私達は、高速船で沼津まで行くから、あなた、車で沼津で待っててくれない」

もう、私からは、旅行気分はとっくに何処かに吹っ飛んでしまっていた。


もうこうなると唯一の救いは、神経痛に効能があるという温泉である。

「つくねは僕が見ているから、ゆっくり温泉に入ってきて」


ブラインドの下がったままの部屋に残されたつくねと私。
陽が落ちるにつれ少しずつ辺りは暗くなっていくが、
私の頭の中は既に真っ暗である。

義母と嫁さんらが温泉に入っている間、
高速船以外でカーブの少ないルートがないか宿の人に確認をする。

来た道よりましなルートがあると教わるが、
果たして義母や嫁さんが納得するか分からない。


しばらくして、顔色が良くなった義母と嫁さんが部屋に戻ってきた。

「誰もいなかったのでゆっくり入ってきた」

気持ちの良い温泉だったという。


災い転じて福となす5   災い転じて福となす6



入れ替わりに私も温泉に入り部屋に戻ると
テーブルの上には驚くほどの料理が並べられていた。


災い転じて福となす7   災い転じて福となす8


いや、テーブルの上に乗りきらない料理が脇に置いてある。

「ワーッ、この料理の量は半端じゃないよ」

思わず漏らした私の声に、義母も嫁さんも笑いながら頷いている。


海こそ見えないが、間違いなく漁港のある戸田温泉。
嫁さんは大好物のカニと格闘し、義母は新鮮な魚料理に舌鼓を打つ。

人間やはりお腹が膨れることは心を穏やかにしてくれるのだろう、
あの暗ーい雰囲気が目の前の美味しい料理を食べている間に薄らいで行った。


家とは様子が違うのか落ち着きのなかったつくねも、
大好きな皆と一緒に寝れるのが嬉しいのか、
子供のようにはしゃぎまわっていた。


災い転じて福となす9   災い転じて福となす10



寝る前にもう一度温泉に浸かりにいた義母と嫁さん、
朝起きた時には心配していた腰の痛みも消えていてほっと一安心である。


宿に着いた日は、それどころではなかった戸田港にも立ち寄り、
あわや別々に帰ることになったかもしれない高速船も見るだけで済み、
なんとかみんな一緒に海岸線を通って帰ることが出来るようになったのである。


災い転じて福となす11   災い転じて福となす12




海岸線とはいえそれなりに曲がりくねった道が続く。
今度は義母の腰を傷めないよう、
後からくる車を先に行かせながらゆっくり車を走らせる。


そんな時に目の前に飛び込んできたのが海を前に従えた富士山である。

「すごいね、母さん、こんなふうに海の向こうに富士山が見える所は少ないのよ」

「私もこんな富士山始めてよ!しかも晴れていて最高ね」

冒頭の義母と嫁さんの感嘆の声である。


災い転じて福となす13   災い転じて福となす14


ゆっくり走ったせいでもあるが、それから1時間ほどは
ずーっと富士山を眺めてのドライブであった。


一時はどうなるかと思った今回の泊まりがけの旅行、
義母も嫁さんもそしてつくねも満足そうである。

本当に”災い転じて福となす”である。

よかった!






                         
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*Comment

■感動しました

義理であれなんであれ私には親がもういない
孝行したい時には親はなし、胸が痛みます
お子さん達も親の背中を見ています
奥様もお義母様も有り余る感謝でしょう
貴方は素晴らしい
とっとこ |  2010.12.23(木) 20:33 |  URL |  【コメント編集】

都筑の風@横浜 様

珠玉の短編でしたね
ハッピーエンドでよかったです
ブラインドの時点でどうしようかとハラハラしましたよ
みんこ |  2010.12.23(木) 23:44 |  URL |  【コメント編集】

ご無沙汰しております。
素晴らしい旅行が出来て本当に良かったですね。
温泉通のパパさんが、ここで失敗するのかとドキドキしました(^^)
結果的には、お天気と風景と美味しい料理の
3拍子が揃って本当に良かったですね。
お写真も素敵です。
次回はどのようにして、お母様と奥様を連れ出すのか
楽しみにさせて頂きます。

Baki3 |  2010.12.24(金) 03:37 |  URL |  【コメント編集】

とっとこ  さん

幸いなことに私の両親も兄貴夫婦の世話を受けながら田舎で健在です。
嫁さんの母が、横浜の家に遊びに来るとたいてい3ヶ月から半年はいて
くれます。やはり娘の方が良いのでしょうかね。
で、義母をこうして散歩や外に連れ出すのは、健康の基本は足腰から
ということで、歩くことで脳が刺激されたり寝たきりにならないように
とおもって勧めています。寝たきりになると本人も辛いでしょうが、
嫁さんも大変。健康が一番ですね。


みんこ さん


さすが義母や嫁さん。
ブラインドの外を見ていたのでしょうが何も言いませんでしたv-12
やはり女性群を連れ出すには周到な準備が必要ですね。


Baki3 さん


札幌は大変な雪だそうですね。
私も雪国で生まれた人間、本当は雪にあこがれるのですが
よめさんはからっきし雪ダメ人間。
本当は雪の露天風呂で雪見酒が出来る所に行きたいのですが
義母も嫁さんも多分つくねも、”どうぞ一人で”となってしまいます。

そうなると伊豆や房総辺りになるのですが。
失敗を繰り返さないようにして次に行く所さがします。



      都筑の風@横浜


都筑の風@横浜 |  2010.12.24(金) 10:05 |  URL |  【コメント編集】

パパさんお疲れ様でしたv-290
ブラインドを上げたら 墓 思わず笑っちゃったv-363

私も宿が写真と全然違った経験ありますよ
みんなブルーな気持ちにv-355
これで食事も悪かったら 最悪でしたね
でも この宿の料理 凄いじゃないですかv-353
料理に救われて 良かったですねv-291
ウララおかん |  2010.12.24(金) 14:55 |  URL |  【コメント編集】

■心何処 

 好かった、好かったですねぇ。お気持ち、手に取る程、分かります。涙腺が緩んで、うんうんと頷きながら、目がしらが熱く為って、霞んじゃいました。
 心が通じ合ってますね。高齢に為ると、誰かがピエロを演じなければ為りません。ピエロで有りますから、成功する時も失敗する時も有ります。でも、誰かがピエロを演じなければ為らないのです。

 好かった、好かったですね。つくねの顔が、皆、知って居ますよ。

 好い物を読ませて頂きました。介護の糧に致しまする。有難う御座います。感謝感謝でありまする。へへへ。
アガタ・リョウ |  2010.12.24(金) 18:11 |  URL |  【コメント編集】

ウララおかん さん


私もこれまで何軒もの旅館に泊まったことがありますが、
窓からお墓が見えたのは今回が初めてでした。
義母達が温泉に入っている間、つくねとしだいに暗くなる部屋で
どうリカバリーをすれば良いのか考えながら待っているときの
気持ち想像して頂ければと思いますv-12


アガタ・リョウ さん


毎日母上を見ておられるアガタ・リョウサンに比べれば、
私のやっていることは大したことではありません。
ただアガタ・リョウさん同様田舎でほとんど歩けなくなった
両親やその面倒を見ている兄貴夫婦のことを思うと、
一日でも元気に自分の足で歩ける義母で会って欲しいと
思っている私です。



  都筑の風@横浜


都筑の風@横浜 |  2010.12.25(土) 09:40 |  URL |  【コメント編集】

■都筑の風@横浜さんへ

メリークリスマス!いや~お疲れ様でした。
私も戸田に行ったのは20年前(笑)同じ頃ですね。
ペット同伴の宿だと限られるんで探すのも
大変だったことでしょうね。
いいお湯とおいしい食事で名誉挽回出来たのは
良かったです~
途中まで読んでて、どきどきはらはらでしたよv-411
また行けると良いですね!
オニキス君 |  2010.12.25(土) 14:21 |  URL |  【コメント編集】

同じときに、別方向から富士山を眺めていたんですね。
その富士山の眺めも、
風さん一家の、ほんわかムード作りに一役
かっていたんですね。

偶然だけど、ちょっとした縁を感じます。
sirowan |  2010.12.25(土) 14:40 |  URL |  【コメント編集】

こんにちは。

天気もよく、義母も大満足、つくねちゃんも一緒で最高の誕生日祝いとなって本当によかったです。
西伊豆は私も大好きで、海や富士山を背景にクネクネと続く海岸線のドライブも自然と心ときめきますよね。勝手ながら皆さんが喜ぶ姿が想像出来て私も嬉しいです。


ステージ |  2010.12.26(日) 09:28 |  URL |  【コメント編集】

オニキス君 さん

最近義母がつくねのことを心配するので、
義母を何処かに連れ出すにはつくねが一緒ということが多くなりました。
ところが一緒は良いのですが、たとえば食事なんか食べ物屋に入れず
観光地でもコンビニでお弁当というパターンが増えたり
私が外でつくねと待っている間女性群は良い思いを・・・
これも女性群があっての私ですので辛抱辛抱v-7


sirowan さん

本当にひょっとして沼津辺りですれ違っていたかもしれませんね。
お互い良い日に小旅行が出来良かったですね。
私の方はひやひやものでしたが。


ステージ さん

観光地化された東伊豆と比べ、鄙びたところが多い西伊豆。
でも鄙びているというのはやはりアクセスに課題があるのでしょうね。
山道が負担になるとは義母を連れて行ってみて初めて分かりました。
やはり鄙びた所は若いうちに行っておかねばならないのでしょうね。
嫁さん孝行も早めにしなければv-8


  都筑の風@横浜
都筑の風@横浜 |  2010.12.26(日) 10:35 |  URL |  【コメント編集】

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